2009年10月04日

『アジア未知動物紀行』 高野秀行

★★★☆☆

ベトナム、奄美、アフガニスタンでの「未知動物」探索紀行である。著者は、今までも多くの未知動物(=UMA)の探索にアフリカやインド、トルコなどに出掛けている。今回も、ベトナムの「フイハイ」、奄美の「ケンモン」、アフガニスタンの「ペシャクパラング」を探しに行った訳だが、今までの探索と違うのは、事前準備なしで出掛けている点である。

それらの未知動物が、見つかる見つからないは、ともかく、探索過程から浮かび上がる、各国各地の内情と歴史が興味深い。そして、3つの未知動物のことごとくに絡んで来るのが、意外にも、「米軍」なのだ。勿論、直接的に関わった証拠があるわけではない。現地の人びとの話題に、間接的に絡んで来るのだ。全く別個の場所で、関係ない未知動物を探しているのに、3つともに米軍がちらつく事実に、アメリカのアジアとの「関わり」が見える。資本でも商品でも政治でもなく、アメリカの姿は「軍事」だけにしか、あらわれない。つまり、アメリカとアジアとの関わりは、「戦争」に偏重しているのだ。
そして、そのアメリカが未知動物の向こう側に、たびたび出て来る。

未知動物やUMAを生み出す人びとの意識の底には、何があるのか。
以前の本より、それに迫る内容であったと思う。
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2009年08月18日

『アジア新聞屋台村』 高野秀行

★★★★☆

この著者にしては、珍しく日本が舞台のアジアネタである。が、登場人物の大半は日本人ではない。
台湾人の女社長が経営する多国籍新聞社エイジアンに所属する、在日アジア人達についてのあれこれである。今回は、日本内にある「外国」ネタであるため、いつもより日本人と外国人との比較が多い。著者だけでなく、途中からこの会社には3人の日本人が入って来るため、その比較はより顕著となっていく。
著者は日本人であるためか、在日アジア人の逞しさとしたたかさに軍配をあげがちであるが、台湾人の女社長は職人向きの日本人の気質を認め、国際分業の必要性を言う。
などと。
辺境に行って、「辺境」のことを書くパターンではないのが、今回の本の特徴である。
著者の言にはときどきふむふむとなる。この本では次の部分に、成るほどと思った。

日本には、外国人による「日本批判」「日本文化論」が死ぬほどあり、…中略…1つのジャンルをなすほどの人気がある。「自分を客観的に見たい」、あるいは「公平な立場でいたい」という強迫観念に近いものが日本人にはある。まことに寛容な国民だ。自虐的だという人もいる。だが、私の実感はちがう。単に「他人からどう思われているか」が日本人にとって唯一最大の関心ごとなのだ。日本人の公平感覚や客観性はその上にしか派生しない。

で、何でそうなるのかが、私は気になっている。
狭い居住可能地域内に大勢の人が暮らしているからか、それとも歴史風土宗教が背景にあるのか。そして、突き詰めていけば、この「他人」とは「自分」なのではないか。
これからも色々と見て読んで聞いていって、探っていきたい事柄である。
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2009年08月17日

『巨流アマゾンを遡れ』 高野秀行

★★★☆☆

友人に貸していたのが返ってきたので書く。
タイトルの通りに、アマゾン川をさかのぼったルポである。著者にカメラマンが同行しているため、写真が豊富。カラーには「おっさんにおぶわれているアルパカの赤ん坊(2頭)」という<珍しく可愛い>写真もある。
どこの辺境を行く時も同じなのだが、著者はここでも現地の交通手段で川をさかのぼっていく。よって、記述内容は普通の現地の実態である。当然ながら、現地の普通は我々の普通とかけ離れている。
アマゾンには今でも多数の先住民族が暮らしている。乗り込んで来た白人もいるし、何故か日本人の行商人もいたりするし、混血は勿論多い。そういう人達の間を縫って、著者らはひたすらアマゾンの源流をめざす。最終的にはその源の山にまで登る。

日本人からしたら波乱に満ちた旅なのだが、現地の人にとってはごく当たり前のことが、書かれているに過ぎない。だからこそ、旅は面白いのだなあと毎度思わせる著者の本である。
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2009年04月25日

『世界のシワに夢を見ろ』高野秀行

★★★☆☆

日本・コンゴ・エチオピア・タイ・インド・ルワンダ・中国・パキスタン・ベトナム・旧ザイール・アマゾン・フランス・ペルー・タンザニア・カンボジアのシワ=辺境を巡った時に、作者が出会った、または、自ら足を踏み入れた「くだらない?」実体験を収録した短編エッセイ集である。
もとが漫画での連載であったためか、本当に1話1話が短く、読みやすい。
が、読みやすいが故に読み終わりも早く、面白いのだが、物足りない気分になってしまった。
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2008年08月17日

『怪しいシンドバッド』高野秀行

★★★☆☆

著者の、10年間分の海外でのエピソードをまとめた、短編集のような本である。
対象地域は、インド、アフリカ、タイ、ビルマ、中国、コロンビアである。
地域が多数であれば、それぞれの地域で「探し」たり、「体験」したりする内容も多岐に渡る。

インドでは無一文になり、アフリカでは某世界クイズ番組取材のバイト、中国では無理を言って胎盤を食し、コロンビアでは幻の幻覚剤を試す、といった具合である。(注:「探索」も「体験」も、ここに上げたのが全てではない)

濃いというか、凄いというか、よく10年でこれだけ体験しているものである。その上、更に、ムベンベ(アフリカ)、アマゾンもこの年数の中に入っているのだから、恐れ入る。

その地域に関する観察眼や経験談から導き出された説明にはどれも、うむむと感じ入るのだが、今回は冒頭のインド人の信用度が頭に残った。
そうか、インドでは近付いてくる人間の10人のうち、○人も要注意人物なのか。
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2008年07月20日

『怪魚ウモッカ格闘記』インドへの道 高野秀行

★★★☆☆

ウモッカとは、インドで目撃されたUMA(未確認不思議動物)である。以前、載せた『怪獣記』では、トルコでジャナワールを探していたが、今度のウモッカは魚である。
著者がネットで探し物募集をかけたところ、このUMAの探索が投稿され、様々な前調べの結果、著者はインドへとこのウモッカ探しへ出発する、…のだが。

次に出版された『神に頼って走れ!』を読むと、『怪魚ー』を読む前に、インド探索で何があったのか、分かってしまう。私はそれをやってしまった。先に『神にー』を読んしまい、オチを知りつつ『怪魚ー』を読み進めるという読み方をしてしまったのだ。しかし、オチが分かっていても、それと悪戦苦闘する著者のじたばたぶりが読ませてくれるため、読書の愉しみ自体に特に問題はなかった。

著者が無事、○○○に行けるようになるといいなあと思いつつ、個人的にはジャナワールもヨロシクと言いたい。
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2008年04月27日

『怪獣記』高野秀行

★★★☆☆

トルコにあるワン湖には「ジャナワール」というUMA(未確認不思議動物ー例:ネッシー)がいる。このUMAにはネッシーのような名前はない。ジャナワールというのは、単にトルコ語で「怪獣」という意味でしかない。高野氏はこのUMAとしては割と知られているジャナワールを探しに、トルコに行った。そしたら・・・。

ワン湖の周辺は、ほぼ「クルド人」の土地である。クルド人は人口約2、3千万人。トルコ、イラク、イラン、シリアなどにまたがって暮らす大人数の少数民族である。トルコでは人口の15ー30%を占めているにも関わらず、少し前まではトルコ国内におけるクルド語の教育や放送も禁止されていた。イラクでクルド人の自治政府が誕生した影響を受けて、クルド人の反トルコ活動が活発になり、昨年から今年にかけて、クルド人の武装組織とトルコ軍との戦闘があった。
『怪獣記』の話は戦闘が激化する前、2006年のことであり、ワン湖周辺の探索に特に問題はない。だが、高野氏一行のガイドをはじめ、登場する人々はほとんどクルド人である。探索には直接関係はないものの、トルコ国内におけるクルド人の立場が、度々、文中に顔を出していて、その点も興味深い。

高野氏は今までにもアフリカにUMAを探しに行っている。今回もそれと同じ「調査」なのであるが、面白いのは、今回は高野氏の方がUMAの情報を提供する側になってしまったことだ。ジャナワールを見つけた訳ではない。が、ジャナワールの「しっぽ」らしきものを、ちょっと踏んづけてしまったのだ。
個人的には、前のムベンベよりもこちらのジャナワールの方を本格的に探索して欲しい。
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2008年04月09日

『極楽タイ暮らし』高野秀行

★★★☆☆

副題:「微笑みの国」のとんでもないヒミツ

タイといえば、微笑みの国がキャッチフレーズだ。その微笑みの裏、いや、微笑みの中に分け入った作者が見たのは、仏教国らしからぬようでいて、とても仏教国らしいタイ人の姿であった。

東南アジアにおいて唯一植民地化を免れ、第2次世界大戦においても(ほとんど戦っていないが、一応)敗戦国側であったのに、外交交渉で敗戦国入りを防いでいる時点で、その<したたかさ>はよく分かる。
が、あの微笑みの中に入り込んだ先に見えて来るのは、こんなヒミツだとは・・・。
あの中国人を取り込んでまったり「タイ人化」させてしまうほどの手腕(=したたかさ)には、畏れ入った。(この点は充分に他国も参考にすべきだと思う)
個人的には、暑い地域に住んでいるくせに、物凄く暑がりで、逆に寒さに強い(=寒い方が好き)なのが1番意外だった。2番手は「娼婦」になる理由だな。確かに金に困ってなっているのは間違いないのだが、困る理由がそれって・・・。(絶句)

外国についてより詳しく知る度に、その国についていた<幻想>みたいなものが破壊される。私はもうフランスにもイギリスにも夢は抱かない。(抱けない)
幻想や憧れは打ち砕かれるためにあるのだとは承知している。知る度に何となく裏切られた気分になるのは、自分の思い込みが悪いんであって、その国のせいではないと重々分かってはいるのだが、総評としては、

タイよ、お前もか・・・。

という内容である。


あ、でも、面白いのは、保障します。
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2008年04月04日

『西南シルクロードは密林に消える』高野秀行

★★★☆☆

中国公安当局に身柄を確保されているシーンから、このルポは始まる。<辺境>を専門にする著者の、「西南シルクロード」を辿るルポである。タイトルに「シルクロード」と付いているが、学術的な内容ではない。このシルクロードはお馴染みの砂漠のシルクロードではなく、近年ようやく着目された草原、海のシルクロードでもない。この「西南」シルクロードは、中国からビルマを経て、インドへと到達するルートなのである。
西南シルクロードは、一応、存在したことが知られている。関連著書もあり、研究もされてはいるが、どこを通ったのか、何を交易していたのか、イマイチ判然としない。また、中国を除く、ルートの大半で民族対立があり、ゲリラが地域の実力者という場所ばかりで、まだ誰もそのルートを踏破していない。
それを踏破してやろうと、著者は中国へと旅立ち、以前ビルマ(ミャンマー)でつくったコネを使って反政府ゲリラと連絡を取り、中国国境を(密入国密出国で)越え、ジャングルを踏破してインドまで到る。ビルマでもインドでも彼が世話になるのは、反政府軍である。『アヘン王国潜入記』でもそうだったが、彼が書き出す反政府軍の「日常」は、いわゆる戦場の「日常」ではない。我々の常日頃にも通じる、ゲリラの「生活」がそこにはある。
地元民である彼らの協力&護衛によって、彼は何とか「踏破」に成功する。(最終的に「無事に」成功させたのは、日本のインド総領事である)
協力を受けつつも、著者のルポライターとしての視点は冷静で、無闇に反政府軍に偏りもしないし、敵対する政府への無分別な攻撃もない。ジャングル踏破という困難な旅程の中で、衣食住を共にすることによって得られる同一感覚と、第3者としての知識と立場を武器に、彼らの実態とその置かれた立場を、適切に分析していく。
ひょうひょうとした書きっぷりは、内戦の悲惨さだけを訴えるルポより、民族対立の背景をより的確に捉えているのではなかろうか。
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2008年04月01日

『神に頼って走れ!』自転車爆走日本南下旅日記 高野秀行

★★★☆☆

内容はそれなりなのだが、如何せん、文字が大きく本が薄く、読みでがない。1時間で読み終わってしまった。
国内の旅であるためか、トラブルもなく旅は進み、東京から沖縄への「神頼み」が順調に終わってしまう。著者のアジア、南米、アフリカ冒険に慣れた読者には物足りない内容だろう。
ただ、日本国内であるが故に、馴染みの場所がたびたび登場する。よくその前を通っている場所が(写真で)掲載されていて、ちょっと驚いた。
面白いことは面白いので、高野秀行冒険入門書としては無難な本かもしれない。
posted by アリノリ at 20:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 高野秀行(書評)