★★★☆☆
西ローマ帝国が滅びた後も、東ローマ帝国こと「ビザンツ帝国」は、およそ一千年の長きにわたってヨーロッパとアジアの狭間、キリスト教とイスラームの境界に位置し続けた。この長命帝国の存続要件は、ビザンツ史の最大のテーマである。本書はビザンツ帝国の強靭な生命力について、国家構造や官僚制・軍隊・徴税体制ではなく、ビザンツを「帝国」足らしめていた「周縁部」からの視点で考察している。ビザンツは多様な地域・民俗・文化を抱える「帝国」であり、その支配領域は拡大・縮小があるものの、ほぼ常に多様な民族を内包していた。
この本では、先ず、帝国の周辺部を対立・衝突の場であるとともに、異民族・異文化との交流の場であるとし、多民族・多文化の共存の場とする。近年の考古学の成果から、共存の実体が明らかになってきているからだ。
ビザンツ帝国の広大さを反映して、考察の対象となる地域は広範囲にわたる。以下、目次でその範囲を記す。
第一章 イサウリア人とビザンツ
ー帝国内「蛮族」の「ローマ化」と社会参加ー
第二章 北アフリカとビザンツ帝国
第三章 中期ビザンツと時代のケルソン
ー帝国北方外交の展開ー
第四章 ビザンツ領南イタリア
ービザンツ・西方・イスラムの衝突と交流の地ー
第五章 十一世紀初頭におけるアンティオキア・ドゥカトンの成立
―ビザンツ帝国による北部シリア再征服とその統治ー
第六章 十一世紀後半のドナウ流域地方ー
―ペチェネーグ人との共生空間ー
第七章 ノルマン戦争にみるビザンツ帝国の存続要件
―中央政府と地域社会ー
第八章 一二〇四年とクレタ
―外部勢力支配地域と中央政府の関係の変容ー
第一章のイサウリア人は小アジア南東部に住む人々、第三章のケルソンはクリミア半島の地名である。第一章から第八章まで全て、ビザンツ帝国周辺部の「地域史」である。
果たして、中央から離れた「周辺地域」から、ビザンツ帝国の強さの秘密が捉えられるのか。
地域史ごとに語られるのは、その地域が持つ「構造」である。中央との関係だけでなく、地域が隣接する民族・勢力との関係を含めて「構造」として取り上げられる。地域ごとにその構造となる要素は異なるが、共通しているのは、その「地域」がビザンツ帝国に留まるか否かは、意外とビザンツ帝国次第である点だろうか。
ビザンツ帝国がその地域を帝国内に留める努力を止めた時点、もしくは、留める力を失った時点で、「地域」は別の勢力下へと移っていく。第五、七章ではビザンツの努力が地域を引き止めたが、他の章では「地域」は全て離れていった。そうして、遠方から離れていき近場が残るのは必然なのだろうが、「地域」からの視点の方が中央の「力」の強弱が見やすいのは確かだ。ただ、これでビザンツの強さの秘密が分かるかと問われたらどうだろうか。
周辺地域の動向は中央次第という共通性は見えたが、さて。
2015年09月21日
2010年11月12日
『夢想のなかのビザンティウム』中世西欧の「他者」認識 根津由喜夫
★★☆☆☆
中世西欧で執筆された『物語』から「ビザンツ帝国」関係する部分を取り出し、中世西欧の人々が「ビザンツ帝国」にどのようなイメージを持っていたか、を『物語』ごとに検討した本である。
取り上げられる『物語』は四つ。
『ジラール・ド・ルシヨン』
『シャルルマーニュ巡礼記』
『クリジェス』
『エラクル』
全てフィクションであるが、一応、元ネタはあるため、著者はどんな事実を下敷きにしているか、についても検討している。
私は四つとも初めて読む話であり、アリエノール=ダキテーヌに関係する話題を除けば、西欧中世史にもさほど詳しくないため、読み終えるのに時間がかかった。(注も多い)
西欧の中世といえば、騎士、王女、王の時代であるが、どの物語にも共通するのは<キリスト教万歳>視点である。また、現在は『物語』と『歴史』の間に、それなりの仕切りがあるが、中世にはそんな仕切りは存在せず、『物語』は『歴史』であった。(明治時代に日本神話を『歴史』に加えたのと同じ感覚だろう)
現在でもフィクション(小説、漫画、ゲームなど)から歴史に関心を抱く人は多い。(まあ、大概、現実はフィクションのように格好良くはないのだが)ということは、『物語』と『歴史』の仕切りは、現在もかなり薄いのかもしれない。
では、その『物語』は、どの程度、事実を反映しているのか。その『物語』には、どのような背景が隠されているのか。ビザンツ帝国と中世ヨーロッパの知識がないと厳しいが、面白い本である。
中世西欧で執筆された『物語』から「ビザンツ帝国」関係する部分を取り出し、中世西欧の人々が「ビザンツ帝国」にどのようなイメージを持っていたか、を『物語』ごとに検討した本である。
取り上げられる『物語』は四つ。
『ジラール・ド・ルシヨン』
『シャルルマーニュ巡礼記』
『クリジェス』
『エラクル』
全てフィクションであるが、一応、元ネタはあるため、著者はどんな事実を下敷きにしているか、についても検討している。
私は四つとも初めて読む話であり、アリエノール=ダキテーヌに関係する話題を除けば、西欧中世史にもさほど詳しくないため、読み終えるのに時間がかかった。(注も多い)
西欧の中世といえば、騎士、王女、王の時代であるが、どの物語にも共通するのは<キリスト教万歳>視点である。また、現在は『物語』と『歴史』の間に、それなりの仕切りがあるが、中世にはそんな仕切りは存在せず、『物語』は『歴史』であった。(明治時代に日本神話を『歴史』に加えたのと同じ感覚だろう)
現在でもフィクション(小説、漫画、ゲームなど)から歴史に関心を抱く人は多い。(まあ、大概、現実はフィクションのように格好良くはないのだが)ということは、『物語』と『歴史』の仕切りは、現在もかなり薄いのかもしれない。
では、その『物語』は、どの程度、事実を反映しているのか。その『物語』には、どのような背景が隠されているのか。ビザンツ帝国と中世ヨーロッパの知識がないと厳しいが、面白い本である。
2010年04月23日
『ビザンツ 文明の継承と変容』 井上浩一
★★★★☆
<諸文明の起源>シリーズの「ビザンツ」版である。ビザンツ本ではお馴染みの井上浩一氏の本であり、期待して読んだ。
ビザンツ帝国は、東西に分かれたローマ帝国の片割れ、東ローマ帝国だ。西ローマ帝国が滅亡した後も、千年の長きにわたって存続した。しかし、ギリシア・ローマ文明の継承者を自認する西欧は、ビザンツ帝国をローマ文明の後継とは認めていない。
この本では、ビザンツ文明はギリシア・ローマ文明を継承したのか、それともしていないのか。していないのならば、ビザンツ文明の「起源」は何か。という点について、論じている。
文章は読みやすいが、ビザンツ帝国史やその社会(テマ制度や正教会など)についての知識がある程度ないと、内容が理解し辛い。
著者がビザンツ文明の「起源」について論じるにあたり、取り上げたのは、以下の4点である。
・都市
・皇帝
・宦官
・戦争
それぞれについて、ギリシア・ローマ文明との連続性、相違点、共通点、また状況に即していかに文明が変容していったか、を検討している。
また、終章では「現代」と「ビザンツ文明」を取り上げ、ビザンツ文明の有り様に現代社会が参考にすべき点を幾つか指摘している。日本史の本ではこのような現代への応用があまり書かれないのだが、世界史の本ではこういう指摘をたびたび見かける。
本書で著者が指摘するのは、現代社会において人間の「神」となりつつあるのは、「環境」であること、そして、民主主義と戦争との深いつながりである。
ビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルでは、イスラーム、キリスト教徒、ユダヤ教徒らが共存していた。また、ビザンツ帝国は、戦争を「必要悪」としながらもできるだけ「戦わずに済ませる」方法を模索した。
キリスト教(ヨーロッパ)とイスラームに挟まれていたビザンツ帝国は、同じキリスト教徒である十字軍(ヨーロッパ)に一度滅ぼされ、最終的にはイスラーム(オスマン帝国)に敗れた。宗教に対する寛容は、オスマン帝国が引き継いだが、オスマン帝国もヨーロッパに押され、トルコ共和国になった後に、一部を除いて寛容さを失う。
今や、西欧諸国内の方がイスラームのモスクを許容し、共存を望まれる時代である。皮肉なことに、かつて潰したビザンツと同じ状況が、ヨーロッパで現れているのだ。さて、ビザンツのような寛容さが持てるのか、それともまた非寛容な勢力に潰されるのか。
現代社会の問題は、ビザンツ帝国に通じる。
<諸文明の起源>シリーズの「ビザンツ」版である。ビザンツ本ではお馴染みの井上浩一氏の本であり、期待して読んだ。
ビザンツ帝国は、東西に分かれたローマ帝国の片割れ、東ローマ帝国だ。西ローマ帝国が滅亡した後も、千年の長きにわたって存続した。しかし、ギリシア・ローマ文明の継承者を自認する西欧は、ビザンツ帝国をローマ文明の後継とは認めていない。
この本では、ビザンツ文明はギリシア・ローマ文明を継承したのか、それともしていないのか。していないのならば、ビザンツ文明の「起源」は何か。という点について、論じている。
文章は読みやすいが、ビザンツ帝国史やその社会(テマ制度や正教会など)についての知識がある程度ないと、内容が理解し辛い。
著者がビザンツ文明の「起源」について論じるにあたり、取り上げたのは、以下の4点である。
・都市
・皇帝
・宦官
・戦争
それぞれについて、ギリシア・ローマ文明との連続性、相違点、共通点、また状況に即していかに文明が変容していったか、を検討している。
また、終章では「現代」と「ビザンツ文明」を取り上げ、ビザンツ文明の有り様に現代社会が参考にすべき点を幾つか指摘している。日本史の本ではこのような現代への応用があまり書かれないのだが、世界史の本ではこういう指摘をたびたび見かける。
本書で著者が指摘するのは、現代社会において人間の「神」となりつつあるのは、「環境」であること、そして、民主主義と戦争との深いつながりである。
ビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルでは、イスラーム、キリスト教徒、ユダヤ教徒らが共存していた。また、ビザンツ帝国は、戦争を「必要悪」としながらもできるだけ「戦わずに済ませる」方法を模索した。
キリスト教(ヨーロッパ)とイスラームに挟まれていたビザンツ帝国は、同じキリスト教徒である十字軍(ヨーロッパ)に一度滅ぼされ、最終的にはイスラーム(オスマン帝国)に敗れた。宗教に対する寛容は、オスマン帝国が引き継いだが、オスマン帝国もヨーロッパに押され、トルコ共和国になった後に、一部を除いて寛容さを失う。
今や、西欧諸国内の方がイスラームのモスクを許容し、共存を望まれる時代である。皮肉なことに、かつて潰したビザンツと同じ状況が、ヨーロッパで現れているのだ。さて、ビザンツのような寛容さが持てるのか、それともまた非寛容な勢力に潰されるのか。
現代社会の問題は、ビザンツ帝国に通じる。
2008年11月24日
『ヴァリャーギ』ビザンツの北欧人親衛隊 マッツ・G・ラーション
★★☆☆☆
ビザンツ帝国の歴代皇帝に、「親衛隊」として仕えた北欧人(=ヴァリャーギ)についての本である。
現在、北欧(=北ヨーロッパ)とされるのは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどの国々である。ビザンツ帝国は、現在のギリシア・トルコに存在した。地中海に面したビザンツは、北欧からは遠いように見えて、意外と近い。北欧から地中海には、黒海を目指して、(途中、陸上を歩く部分もあるが、)川を船で行けばいいの。ヴァリャーギたちは、だいたいこのルートを通って、はるばるビザンツ帝国まで働きに来た。
ビザンツの皇帝たちは、自分達の身辺警護に「傭兵」を多く用いていた。傭兵となったのは、大半が北欧人、ノルマン人、トルコ人などの他国人で、その民族は多様であった。
金で雇われているとはいえ、ヴァリヤーギの忠誠心は強く、ここぞ、という場面で何度も、皇帝を救う大事な戦力となっている。彼らに比べると、ノルマン人(=フランク人)の忠誠心はたいがい低く書かれている。
ビザンツ関連の他書でも、彼らの存在は記されている。本書の内容も他書とかぶる部分が幾つかあるが、目新しいのは、「石碑」資料を用いている点である。石碑に書かれたルーン文字(北欧の古代文字)を解読し、その内容から、ヴァリヤーギについて語るのは、他書では見られない手法だ。本自体もその資料をかなり意識して編集されており、実に内容の1/3が石碑資料とその解読用頁に割かれている。(つまり、本文が2/3だけしかない)
一般向けに書かれているらしいが、文章が横書きで読み辛い。ビザンツの歴史を知らないと、分かりにくい部分も多い。どうやら、ルーン文字勉強用資料も兼ねているようなので、そちらに興味がある人にもお薦めのようだ。正直、何で日本語訳がわざわざ出るのか、謎な本であるが、存在自体が面白いのでよしとしよう。
ビザンツ帝国の歴代皇帝に、「親衛隊」として仕えた北欧人(=ヴァリャーギ)についての本である。
現在、北欧(=北ヨーロッパ)とされるのは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどの国々である。ビザンツ帝国は、現在のギリシア・トルコに存在した。地中海に面したビザンツは、北欧からは遠いように見えて、意外と近い。北欧から地中海には、黒海を目指して、(途中、陸上を歩く部分もあるが、)川を船で行けばいいの。ヴァリャーギたちは、だいたいこのルートを通って、はるばるビザンツ帝国まで働きに来た。
ビザンツの皇帝たちは、自分達の身辺警護に「傭兵」を多く用いていた。傭兵となったのは、大半が北欧人、ノルマン人、トルコ人などの他国人で、その民族は多様であった。
金で雇われているとはいえ、ヴァリヤーギの忠誠心は強く、ここぞ、という場面で何度も、皇帝を救う大事な戦力となっている。彼らに比べると、ノルマン人(=フランク人)の忠誠心はたいがい低く書かれている。
ビザンツ関連の他書でも、彼らの存在は記されている。本書の内容も他書とかぶる部分が幾つかあるが、目新しいのは、「石碑」資料を用いている点である。石碑に書かれたルーン文字(北欧の古代文字)を解読し、その内容から、ヴァリヤーギについて語るのは、他書では見られない手法だ。本自体もその資料をかなり意識して編集されており、実に内容の1/3が石碑資料とその解読用頁に割かれている。(つまり、本文が2/3だけしかない)
一般向けに書かれているらしいが、文章が横書きで読み辛い。ビザンツの歴史を知らないと、分かりにくい部分も多い。どうやら、ルーン文字勉強用資料も兼ねているようなので、そちらに興味がある人にもお薦めのようだ。正直、何で日本語訳がわざわざ出るのか、謎な本であるが、存在自体が面白いのでよしとしよう。
2008年09月21日
更新
「気になる」に「希土戦争時における日本商船による難民救助」を。
資料の原本探してうろついていたら、日本の軍艦の存在に疑問を投げかける新聞記事に行き当たったので、「気になる」に掲載してみた。
その記事があったのは、「アルメニア人のジェノサイド」というサイト…。スミルナで虐殺されたのは、ギリシャ系住民だけではなく、アルメニア系も多数含まれていた。そのため、その事件の関連資料がたくさんfair use用に置いてあった。
その中に1922年12月3日のBOSTON GLOBEの記事もあった。(「気になる」に資料として日本語訳を掲載)
そこに、こんなコメントがあった。
The Japanese ship was ONLY known ship that did NOT follow order to remain neutral.On behalf of the victims of Smyrna -Greeks, Armenians, Assyrians and Others, we owe the Japanese Goverment a show of appreciation for their compassionate intervention.
強調されているONLYが、資料1のアメリカ汽船の記事と矛盾する。そして、救助した日本の船は常に「1隻」扱いだ。
日本の軍艦は、本当にあの場にいたのだろうか?
資料の原本探してうろついていたら、日本の軍艦の存在に疑問を投げかける新聞記事に行き当たったので、「気になる」に掲載してみた。
その記事があったのは、「アルメニア人のジェノサイド」というサイト…。スミルナで虐殺されたのは、ギリシャ系住民だけではなく、アルメニア系も多数含まれていた。そのため、その事件の関連資料がたくさんfair use用に置いてあった。
その中に1922年12月3日のBOSTON GLOBEの記事もあった。(「気になる」に資料として日本語訳を掲載)
そこに、こんなコメントがあった。
The Japanese ship was ONLY known ship that did NOT follow order to remain neutral.On behalf of the victims of Smyrna -Greeks, Armenians, Assyrians and Others, we owe the Japanese Goverment a show of appreciation for their compassionate intervention.
強調されているONLYが、資料1のアメリカ汽船の記事と矛盾する。そして、救助した日本の船は常に「1隻」扱いだ。
日本の軍艦は、本当にあの場にいたのだろうか?
2008年05月15日
地中海岸ビザンティン遺跡発掘記『サンタクロースの島』浅野和生
★★★★☆
アマゾンが見る度に薦めてきて、評価も良かったので、まんまと買ってしまった本。読み終わっての後悔はない。
トルコのリキア地方でビザンツ(=ビザンティン)の遺跡を日本人の調査隊が発掘した。その発掘の始まりから終わりまで(第1次現地調査から第5次現地調査までと第1次発掘調査から第8次発掘調査まで)を、素人でも読みやすいように丁寧にまとめている。発掘場所やその周辺、関連資料の写真も豊富で、ビザンツに興味がない人でも楽しく読めるだろう。表紙のデザインがイマイチなのが残念だが、広く(中学生くらいから)勧められる内容だ。
発掘だけではなく、現地(トルコ)の人達との交流や食事やトラブル。調査発掘費用の入手方法。発掘により「聖ニコラウス=サンタクロースの島」として遺跡が有名になったため、周辺地域の観光化が進んでいくさまににも言及していて、広い視点で異国での「発掘調査」を知ることができる。
また、最後にこの調査をネタにした漫画「エロイカより愛をこめて」の紹介もある。
かなりマイナーな出版社から出ているので、アマゾンが薦めてくれなければ、出会えなかっただろう。薦めてくれてありがとう、アマゾン。(でも、他のお薦めは買う気はないです)
続きはこちら
アマゾンが見る度に薦めてきて、評価も良かったので、まんまと買ってしまった本。読み終わっての後悔はない。
トルコのリキア地方でビザンツ(=ビザンティン)の遺跡を日本人の調査隊が発掘した。その発掘の始まりから終わりまで(第1次現地調査から第5次現地調査までと第1次発掘調査から第8次発掘調査まで)を、素人でも読みやすいように丁寧にまとめている。発掘場所やその周辺、関連資料の写真も豊富で、ビザンツに興味がない人でも楽しく読めるだろう。表紙のデザインがイマイチなのが残念だが、広く(中学生くらいから)勧められる内容だ。
発掘だけではなく、現地(トルコ)の人達との交流や食事やトラブル。調査発掘費用の入手方法。発掘により「聖ニコラウス=サンタクロースの島」として遺跡が有名になったため、周辺地域の観光化が進んでいくさまににも言及していて、広い視点で異国での「発掘調査」を知ることができる。
また、最後にこの調査をネタにした漫画「エロイカより愛をこめて」の紹介もある。
かなりマイナーな出版社から出ているので、アマゾンが薦めてくれなければ、出会えなかっただろう。薦めてくれてありがとう、アマゾン。(でも、他のお薦めは買う気はないです)
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2008年05月06日
『ビザンツの鷲』3、4 斉城昌美
★★☆☆☆
世にも珍しいビザンツ人主役の話が、とっても稀な「ティムール帝国」を舞台としている設定自体がとても稀少である事実に、3巻でようやく気付いた。(2巻ではティムール本人が出ていなかったため、あまり意識できなかった)
ティムール帝国とは、ティムールがチンギス・ハンのモンゴル帝国再建を目標に1代でつくり上げた国である。イランとその周辺を勢力範囲とし、世界史では「ティムール帝国にアンカラの戦いで敗北し、オスマン帝国が一時弱体化した」という説明のためだけに出て来る程度の扱いしかされていないよーなところである。
作者もあとがきに書いていたが、日本での研究者は少なく、ティムール帝国を単独で扱っている本もまだ見たことはない。ビザンツもマイナーだが、それに輪をかけて知られていないのが「ティムール帝国」なのだ。話の内容は兎も角(オイ)、分かりやすくティムール帝国を知るにはかっこうの本である。
話は3巻から少々ファンタジーっぽくなってしまうのが、残念であった。それでも、日本ではあまり見掛けない、「ビザンツ」「イスラム」「ティムール」3点セットを書いているのが、(個人的に)とても良かった。
世にも珍しいビザンツ人主役の話が、とっても稀な「ティムール帝国」を舞台としている設定自体がとても稀少である事実に、3巻でようやく気付いた。(2巻ではティムール本人が出ていなかったため、あまり意識できなかった)
ティムール帝国とは、ティムールがチンギス・ハンのモンゴル帝国再建を目標に1代でつくり上げた国である。イランとその周辺を勢力範囲とし、世界史では「ティムール帝国にアンカラの戦いで敗北し、オスマン帝国が一時弱体化した」という説明のためだけに出て来る程度の扱いしかされていないよーなところである。
作者もあとがきに書いていたが、日本での研究者は少なく、ティムール帝国を単独で扱っている本もまだ見たことはない。ビザンツもマイナーだが、それに輪をかけて知られていないのが「ティムール帝国」なのだ。話の内容は兎も角(オイ)、分かりやすくティムール帝国を知るにはかっこうの本である。
話は3巻から少々ファンタジーっぽくなってしまうのが、残念であった。それでも、日本ではあまり見掛けない、「ビザンツ」「イスラム」「ティムール」3点セットを書いているのが、(個人的に)とても良かった。
2008年01月19日
『ビザンツの鷲2』群狼山河 斉城昌美
★★☆☆☆
『ビザンツの鷲』の続編。
仇討ちのためにビザンツ帝国に追われる立場となった「ビザンツの鷲」ことアレクシオス。コンスタンティノープルを後にした彼は、黒海を渡り、トレビゾンドへと向かう。春が来て、静まった黒海に追手が現れる。アレクシオスは、弟のレオンを修道院に預け、仇でもある追手の貴族との決闘に挑もうとする…。
舞台が東方に動いたことにより、面白い登場人物が増え、1巻よりは楽しく読めた。
ギリシャ(ビザンツ)人とイタリア(ジェノア)人、イスラームの書き分けも適切だと思う。
信仰上の対立は、このキリスト教とイスラームの境界地域では避けて通れない。用心棒としてアレクシオスと同道している元ヨハネ騎士のジャンニはカトリック。アレクシオスは一応ギリシャ正教。行く地域はイスラーム圏。かと言って、宗教談義が話のメインではない。戦いの合間合間に「この戦いの正義の戦いか?」「たとえ強盗であっても、イスラームの配下となってキリスト教徒がキリスト教徒を殺して良いのか?」などという問いがアレクシオスとジャンニの間で交わされる。
十字軍(=カトリック)に故国(ビザンツ帝国)を一度滅ぼされ、多民族国家に生まれつき、祈りの甲斐もなく父母を病で失い、戦場の経験があるアレクシオスは、イスラームを悪く言いがちなジャンニに、冷徹且つ不信心な答えを返す。
ティムール帝国領内に入った一行は、今後、アフガニスタンの方へ向かうようだ。
残りあと2巻。
全部読む気になった。
『ビザンツの鷲』の続編。
仇討ちのためにビザンツ帝国に追われる立場となった「ビザンツの鷲」ことアレクシオス。コンスタンティノープルを後にした彼は、黒海を渡り、トレビゾンドへと向かう。春が来て、静まった黒海に追手が現れる。アレクシオスは、弟のレオンを修道院に預け、仇でもある追手の貴族との決闘に挑もうとする…。
舞台が東方に動いたことにより、面白い登場人物が増え、1巻よりは楽しく読めた。
ギリシャ(ビザンツ)人とイタリア(ジェノア)人、イスラームの書き分けも適切だと思う。
信仰上の対立は、このキリスト教とイスラームの境界地域では避けて通れない。用心棒としてアレクシオスと同道している元ヨハネ騎士のジャンニはカトリック。アレクシオスは一応ギリシャ正教。行く地域はイスラーム圏。かと言って、宗教談義が話のメインではない。戦いの合間合間に「この戦いの正義の戦いか?」「たとえ強盗であっても、イスラームの配下となってキリスト教徒がキリスト教徒を殺して良いのか?」などという問いがアレクシオスとジャンニの間で交わされる。
十字軍(=カトリック)に故国(ビザンツ帝国)を一度滅ぼされ、多民族国家に生まれつき、祈りの甲斐もなく父母を病で失い、戦場の経験があるアレクシオスは、イスラームを悪く言いがちなジャンニに、冷徹且つ不信心な答えを返す。
ティムール帝国領内に入った一行は、今後、アフガニスタンの方へ向かうようだ。
残りあと2巻。
全部読む気になった。
2008年01月17日
『史料が語るビザンツ世界』和田廣
★★☆☆☆
ビザンツ帝国に暮らしていた人々について、著者の説明と引用「史料」で紹介する本である。
「史料が語る」と題しているだけあって、引用史料が長い。ちょっと長過ぎるんじゃないか、と素人には思えるくらいである。
全7章で紹介される内容は、以下の通りである。
第1章「皇帝」
第2章「宦官」
第3章「修道士」
第4章「大土地所有者」
第5章「知識人」
第6章「庶民」
第7章「隣人がみたビザンツ」
どれも著者の説明の後に、関連史料の引用というスタイルが取られている。残念なのは、引用史料を読み終えた後に、解説がある時とない時があること。確かに、先に「説明」はなされているが、必ずしも引用史料の内容についての説明ではないため、史料を読み終わった後に、「ああ!ここのところ、もっと説明して欲しいのに」というのが、度々あった。ので、★2つ。
文章に面白みがないが、記載内容は興味深い。
ビザンツ帝国にも「宦官」がいたのは知っていた(<帝国>には「宦官」は付ものである)が、ローマ帝国からの慣習として存在していた、のを、今回初めて知った。てっきり東方(ビザンツ帝国)からの慣習かと思っていたのだが、ローマ帝国(西)からのものだったのか。…いや、ローマ帝国はギリシャ文明の影響を大きく受けて、ギリシャ文明は更にメソポタミア・エジプト文明の影響でできたから、もともと古代ギリシャにもいたのか?(ここの点、要再確認)
また、最後の7章において、北方、東方、西方で、ビザンツに対する見方が異なるのも面白い。
北方(スラヴ人):先進国、好印象
東方(アラブ人):先進国、対等
(トルコ人):はじめから支配対象
西方(カトリック圏):異端、嫌い
トルコ人が小アジア(アナトリア)に進出した時には、既にビザンツ帝国は弱体化していたため、同じイスラームのアラブ人と見方が違っている。
同じキリスト教徒である西方のローマ教皇が、1番口汚くビザンツについて書いている。それが、第4回十字軍に繋がるのだろうな。カトリックとギリシャ正教会は教義はそんなに違わない。違うのは、典礼の方法と聖餅に何を用いるかなどの(傍から見たら)ささやかな部分。悪口の原因は、キリスト教会で1番上位に立つのは、ローマ教皇であるとしたいカトリック側と、それを認めないギリシャ正教会の権威争いにつきる。
いつでもそうだが、身内同士の争いが、最も醜く、且つ、始末に負えない。
文章は平易だが、井上章一氏のような愉悦成分は欠ける。ビザンツをより深く知りたい人なら、飽きずに読めるだろう。
ビザンツ帝国に暮らしていた人々について、著者の説明と引用「史料」で紹介する本である。
「史料が語る」と題しているだけあって、引用史料が長い。ちょっと長過ぎるんじゃないか、と素人には思えるくらいである。
全7章で紹介される内容は、以下の通りである。
第1章「皇帝」
第2章「宦官」
第3章「修道士」
第4章「大土地所有者」
第5章「知識人」
第6章「庶民」
第7章「隣人がみたビザンツ」
どれも著者の説明の後に、関連史料の引用というスタイルが取られている。残念なのは、引用史料を読み終えた後に、解説がある時とない時があること。確かに、先に「説明」はなされているが、必ずしも引用史料の内容についての説明ではないため、史料を読み終わった後に、「ああ!ここのところ、もっと説明して欲しいのに」というのが、度々あった。ので、★2つ。
文章に面白みがないが、記載内容は興味深い。
ビザンツ帝国にも「宦官」がいたのは知っていた(<帝国>には「宦官」は付ものである)が、ローマ帝国からの慣習として存在していた、のを、今回初めて知った。てっきり東方(ビザンツ帝国)からの慣習かと思っていたのだが、ローマ帝国(西)からのものだったのか。…いや、ローマ帝国はギリシャ文明の影響を大きく受けて、ギリシャ文明は更にメソポタミア・エジプト文明の影響でできたから、もともと古代ギリシャにもいたのか?(ここの点、要再確認)
また、最後の7章において、北方、東方、西方で、ビザンツに対する見方が異なるのも面白い。
北方(スラヴ人):先進国、好印象
東方(アラブ人):先進国、対等
(トルコ人):はじめから支配対象
西方(カトリック圏):異端、嫌い
トルコ人が小アジア(アナトリア)に進出した時には、既にビザンツ帝国は弱体化していたため、同じイスラームのアラブ人と見方が違っている。
同じキリスト教徒である西方のローマ教皇が、1番口汚くビザンツについて書いている。それが、第4回十字軍に繋がるのだろうな。カトリックとギリシャ正教会は教義はそんなに違わない。違うのは、典礼の方法と聖餅に何を用いるかなどの(傍から見たら)ささやかな部分。悪口の原因は、キリスト教会で1番上位に立つのは、ローマ教皇であるとしたいカトリック側と、それを認めないギリシャ正教会の権威争いにつきる。
いつでもそうだが、身内同士の争いが、最も醜く、且つ、始末に負えない。
文章は平易だが、井上章一氏のような愉悦成分は欠ける。ビザンツをより深く知りたい人なら、飽きずに読めるだろう。
2008年01月12日
『ビザンツの鷲』帝国晩照 斉城昌美
★★☆☆☆
ビザンツで小説ものはないか、と探してみて、ひっかっかったシリーズもの。
1204年に十字軍によって滅ぼされたビザンツ帝国は、1261年に復活した。その復活後のビザンツ帝国を舞台にした物語である。
主人公はギリシア(ビザンツ)人貴族の青年である。彼は商人でもあり、「ビザンツの鷲」の二つ名を持つ武人としても知られる。
かつての栄光の影もなく、ビザンツ帝国の現状は衰退著しい。
領土は縮小し、経済はジェノア(=ジェノヴァ)とヴェネツィアに握られ、ティムールによってトルコの脅威は消えていたが、皇帝の地位を巡る対立と内部分裂から、その隙に勢力を拡大することもままならない。
青年貴族アレクシオスは、そんな帝国の現状に嫌気がさしている。彼はどの派閥にも属さず、日々の平穏を保とうと努めている。だが、周囲の状況はそんな彼をも否応なく謀略に巻き込んでいく。
可もなく、不可もなく。
陰謀のあれやこれは、ビザンツらしいとは思うが、主人公が宮廷や政治にまで関わらないので、さほど凄い謀略には感じられない。
この後、黒海を渡って東へ向かうらしいので、そちらの方が面白そうだ。この時代をどんなふうに描写してているのか、チェックしてみよう。
ビザンツで小説ものはないか、と探してみて、ひっかっかったシリーズもの。
1204年に十字軍によって滅ぼされたビザンツ帝国は、1261年に復活した。その復活後のビザンツ帝国を舞台にした物語である。
主人公はギリシア(ビザンツ)人貴族の青年である。彼は商人でもあり、「ビザンツの鷲」の二つ名を持つ武人としても知られる。
かつての栄光の影もなく、ビザンツ帝国の現状は衰退著しい。
領土は縮小し、経済はジェノア(=ジェノヴァ)とヴェネツィアに握られ、ティムールによってトルコの脅威は消えていたが、皇帝の地位を巡る対立と内部分裂から、その隙に勢力を拡大することもままならない。
青年貴族アレクシオスは、そんな帝国の現状に嫌気がさしている。彼はどの派閥にも属さず、日々の平穏を保とうと努めている。だが、周囲の状況はそんな彼をも否応なく謀略に巻き込んでいく。
可もなく、不可もなく。
陰謀のあれやこれは、ビザンツらしいとは思うが、主人公が宮廷や政治にまで関わらないので、さほど凄い謀略には感じられない。
この後、黒海を渡って東へ向かうらしいので、そちらの方が面白そうだ。この時代をどんなふうに描写してているのか、チェックしてみよう。